フランスの最終兵器はただの女たらし?
ジローズの「戦争を知らない子供たち」すら知らない子供達が多くなったほどこの時代は平和。だからこそ先日タリバンが怒涛の勢いでアフガニスタンの首都、カブールを制圧したのが世界的なビッグニュースになった。世界中の誰もが20年前に起こった9・11のことを鮮明に覚えているから急に「戦争」への恐れが甦ってきた。
しかし原爆の脅威もあって戦争をやれるほど馬鹿な国はもう何処にもないことも事実。どちらかというと脅かしてくるような敵が現れた途端に暗殺、恐喝、賄賂のような汚い手段を使ってまずこっそり鎮めようとするのが主流だろう。現実はともかくスパイ小説の中ではお偉いさんは少なくとも皆そういう手段を選ぶわけで、諜報機関から派遣されるエージェントはこういう任務ばかりだ。
スパイ小説というときっと007、またの名をジェームズ・ボンドのことを思い浮かべる人は多いだろう。「映画だけじゃないんだ」と驚く人もきっと少なくはない。しかしボンドシリーズ以前に冷戦中のヨーロッパを魅了した別のスパイシリーズがあり、その題名は主人公のエージェント番号からきてる「OSS117」である。フランス人著者によって書かれた265冊も超ロングシリーズである。一見ボンドのパクリのように見えなくても一応先にこちらの方が制作されたし、主人公が根本的に違う。
ボンドがどんな仕事を完璧にやり遂げるイケてるダンディとは反対に、このいかにもフランスらしいキャラクターは最終的にどの使命も果たせるとはいえ女たらしのダメ男っぽいところが多くて、定番のスパイ物の真面目さとのギャップが人気の秘訣になった。実写版も数多く制作された中、フランス人で唯一オスカー賞を受賞したことのあるジャン・デュジャルダン主演の方が見事にそのギャップを表現して最高の「フレンチ・スパイコメディー」になった。とはいえこのエージェントがタリバン政権を倒せるかどうかは別な話だが。
著名 Jean Bruce
題名「0SS117」
和訳 未定
Rémi BUQUET
フリーランス翻訳家