パリのお好み焼き屋に、この10年の移り変わりを聞く

今月のお客様 田淵 寛子 さん

ここ10年でパリの日本食事情も随分変わりました。ラーメンやおにぎりなど、様々な日本食の認知度が高まりましたが、お好み焼きもそのひとつ。市内中心部マレ地区で2014年からお好み焼き屋「オコムス」を営む田淵さんに話を聞きました。
(文 守隨亨延)

今の内装トレンドはコテコテ

パリでお好み焼き屋を開いたきっかけは?


 2010年9月に、日本で私の離婚慰めパーティーを開いたのですが、シェアメイトがたくさんのフランス人を連れてきて、その彼らにお好み焼きを振るまったら好評だったことがきっかけです。パリでお好み焼き屋を開こうと決めて2012年2月に渡仏。2014年3月8日に現在のお店をオープンして、今年の3月で10周年を迎えました。


この10年はどうでした?


 早かったです。この10年間で、もっと色々なオーナーさんがパリでお好み焼き屋を出して、お店が増えると思っていましたが、想像していたほど増えなかったですね。ラーメン屋の方がいっぱいできましたね!


お店は10年間で変わった?


 オープン当初、うちはモノトーン調の内装の、シンプルでスタイリッシュな雰囲気でやっていました。しかし、ここ2、3年は、昭和の日本を感じさせる雰囲気が世間から求められています。
確かに近年のパリでは同スタイルの凝った内装のラーメン屋が注目されて、他店も追随していますね。
それなら「提灯つける?」「ポスター貼る?」「入口にのれん付ける?」となって、現在は店内をコテコテに装飾しています。かける音楽も昔はジャズでしたが今はJポップ。オシャレな感じで売っていたお店で、昭和歌謡をかける時代が来るとは思っていなかったですね(笑)。

アツアツを食べてほしいが食べてくれない

お好み焼きの作り方はこの10年間で試行錯誤がありましたか?


 当初から変えていません。最初はフォアグラやトリュフを使うフランスっぽいものも考えましたが、日本のお好み焼きそのままの味を食べたいお客さまの方が多いため、日本の作り方を続けています。少し変えるといっても、グルテンフリーに対応するとか、チーズを多めにかけるくらいでしょうか。


お客さまからフランスならではだと思う質問を受けたりしますか?


 お好み焼きは分厚いので、焼くのに時間がかかるじゃないですか。当初はそれを知らないお客さまが多かったので「何でそんなに時間かかるんですか?」と質問されることはありました。お猪口のことをショットだと思っていて、日本酒をショットでくれと言われたこともありました。でも今では正しい理解が進んでいます。


意外だったフランス人が苦手な点は?


 熱々過ぎるとかでしょうか。フランスは熱い食べ物が苦手な人が多いので、私たちとしては熱々を食べてほしいけど、冷ましてから食べる人もいらっしゃいますね。フランスの方はおしゃべり好きなので、お話しに夢中で冷めちゃうこともありますね……。
以前日本酒が飲めるおばんざい屋(Sake Lover 現在は閉店)も経営されていました。
 日本酒に合う食事を小鉢で提供していたのですが、飲み物1杯あるかないかと、小鉢1つ2つだけで楽しむお客さまもよくいたため、レストラン経営的にはもう少し改善が必要だと感じました。小鉢にしたのは、種類をたくさん頼めるようにという意図でした。このジレンマが私の中でまだ解決できていないため、そういう意味では各人が主菜を必ず頼んでくれるお好み焼き屋の方が、経営としては良いと思っています。


今後の目標は?


 スタッフも層が厚くなってきました。以前は、ワーホリの子が多くスタッフの回転も今よりは早かったですが、今は年単位で働くようになって、サービスも安定しています。フランスでお好み焼き屋の店舗を増やしたいですね!


【HP】https://www.okomusu.fr/