アメリカ独立記念日

7月4日はアメリカ独立記念日だったので、ニューヨークでは有名な花火が開催されました。大混雑だろうから現地に行かないつもりでしたが、なんと無料観覧席のチケットをネットでゲット。やった〜! 当日は行きたくなさそうな家族を「観覧席で優雅に見られるから」と説得して、無理やり出発。が、地下鉄最寄りの駅に着いてからが地獄の始まりであった。まず、通路がイモ洗いの如く人が詰まっていて駅の出口にたどり着かない。優雅とは。ようやく地上にて、チケットに記載されたゲートに着くとまたギュウギュウ。みんな口々に「どこに行きゃいいの」「チケットあるのに」など混乱中です。待つこと20分、突然ゲートがちょこっと開き、人が雪崩のように押し寄せる!これ、将棋倒しで人が死ぬやつ! お嬢と次女アムが潰されそうになるのを若旦那が「子どもがいます! 押さないで!」と叫び必死で守ってなんとかゲートを抜けました。何の戦争なのかな?
 観覧席の方に向かうとやっぱり人だらけ。5分に1回くらい1メートルずつくらい進むから信じて待つこと30分、林の手前で全然進まなくなった。木の後ろに光がうっすら見えるけど、これ裏にもしかして初めてのプロジェクションマッピングをすると噂のブルックリンブリッジが……? さらに、なんだか臭い。よく見たらゴミ収集車の隣であった。後ろの金髪ギャルたちが「屋上でお酒飲んで騒ぐはずがなんでゴミの横にいるわけ〜? イェーイ!!」明るく踊りながら絶望していた。周りにはベビーカーが3台ほど。みなさんと傷をなめ合いたい。なんて愚かな選択をしてしまったんでしょう、と。
 夜9時半に花火がスタート。さっきまで腕がぶつかったとか、はぐれちゃったとかで喧嘩していた人々も嬉しそう。でも、林のせいで見えるのはショーの一部。10分ほどで単調な花火の連続に、子ども達も飽きてきてゲームを始め、大人たちもフィナーレだと思って「終わりよー!」って盛り上がったのに次の花火が上がって、「なんだ~」っていうのを6回くらい繰り返していてみんな帰りたそう。私も。なぜなら私、トイレに行きたいから。
 群衆から全く抜けられない状況でトイレに行けなそうと思った瞬間に腹がゴロゴロ〜。花火が爆発しているけど、私の肛門も爆発寸前である。ロングスカートだから最悪漏らしてもバレないか?? ゴミ収集車の下に潜って用を足すのはどうか? 目の前には今まさにプロジェクションマッピングされているらしい青と赤と白の光線だけ見える。アメリカの国旗が写ってるのかな、いやフランスの国旗かもしれない。もはや何を観ているのかわからなくなってきた。神様、二度と嫌がる家族を独立記念日の花火に連れてきたりしません。だから私にトイレに行かせてくださいー。25分間の真摯な祈祷が続き、ようやく花火終了。近くのバーに走り、若旦那が「レストルーム、シーイズエマージェンシー!」とあたかもシーが指すものは娘のような表情で懇願すると、特別OK! 全然トイレに行きたくない次女を連れてトイレに侵入成功。便座が輝いて見えた。花火よりも美しかった。

信号やら木やらいろいろ邪魔。
家で見てたら音楽も聞けたら
しいですね

ゴミ収集車を観覧席入り口前に停めた意図は一体。
しかもまだゴミ入ってたし。

吉野亜衣子


ラジオ局を辞め、夫の留学についてパリへ。
帰国後、日仏文化交流のための NOISETTEを設立。2022年で設立10周年。
2024年春よりNY在住。

連載中のトモクンとポッドキャストやってます。