子どもたちと一緒にワクワクできるアトリエを! ――幼児教育のプロが歩んだ仏でのお仕事変遷

【今月のお客様】

コアントロさやか さん

2022年からスタートしたパリの「Atelier Petits Pois(アトリエ プチポワ)」。小さな子どもたちのためのアトリエを主宰するのは、20年弱パリの日系幼稚園教諭を続けてきたコアントロさやかさん。アトリエでの様子から、日仏の幼児教育の違い、そして、長い人生においての働きかたも考えてみます。

絵本の中のヨーロッパに憧れた子ども時代

この1月は午うま年なのでみんなで馬の制作物を作りました。パネルシアターや紙芝居など、季節や年によっていろいろ変えています。ひな祭りや節分、端午の節句など日本の行事は、こちらに暮らす日仏カップルの子どもや、フランス社会で生きる日本人カップルの子どもたち、それに最近はフランス人カップルもとても興味を持ってくれてい
ます。フランスでは日本文化が人気ですが、ここでは漫画やアニメ由来のものというよりは、本来の伝統文化を教えたいと思っています。行事の説明をして、お菓子を食べたり、工作したり。参加者は8人前後で、家庭ではなかなか伝えられないことをお子さんに日本語で教えています。

元々、子ども関係の仕事をしたい気持ちはあったんですが、それと同時に、日本じゃないなあという気持ちがあったんです。なぜフランスかというと、子どもの頃にジブリの『魔女の宅急便』のキキが大好きだったから。今思えば舞台はフランスじゃなくてクロアチアだったんですが(笑)。幼い頃から絵本が大好きで、絵本の中のヨーロッパの
雰囲気も好きでした。大学でフランス語を勉強していたのですが、海外で子どもたちに日本の文化を教えるインターンシップを見つけて、これだ!と思い、大学を休学してフランスに行きました。行き先は田舎の幼稚園で、幼稚園の先生の家でホームステイしながら、半年間子どもたちに日本文化を教えました。

本当に田舎だったんですよ。フランス西部の町ポアティエから車でいった町で素敵なところですが、テレビやネット環境もなく、横でヤギのチーズを作っているようなところです。面白かったのは、そこの幼稚園に飾られていた日本人形がいつの間にかさやかと呼ばれるようになり、数年後に遊びに行くと知らない子たちからも「本物のさやかが来た!」と言われたことです(笑)。みんながその人形をさやかと呼んでくれていたんでしょうね。帰国して、今度は学生ビザでフランスに戻り、その後パリで日系の幼稚園に勤めることになりました。

完全分業スタイルのフランス幼稚園

すごく楽しかったです。アットホームな幼稚園で、年少年中年長と2歳児クラスがあって、多いときは1クラスに20人弱いることも。ほぼ日本からの駐在帯同のお子さんなので、普通の日本の幼稚園とはちょっと違うかな。日仏カップルのお子さんも週一日通う日があったり、日本が大好きなイタリア人とフランス人カップルのお子さんもいました。
 日本の幼稚園はカリキュラムがきっちりしていて、お遊戯や歌などいろいろなことができるようになるし、先生の目が行き届いていて安心感があります。逆に言えば、フランスの幼稚園は自由だし、掃除や片づけはアシスタント、食事は食堂の方、自由遊びや延長保育はアニマターと呼ばれる若いお兄さんお姉さん、と分業になっています。だから先生は子どもたちとは別にランチをとり、コーヒータイムもあるのは日本とは違う部分でしょう。学芸会の子どもの配役は日本ほど気を遣わないなど他にも違いはあります。

 私、幼稚園ですごく働いてきたんですよね。かたや旦那は時間に融通がきく仕事だったので、子育てをお願いすることが多くて、コロナ禍もあり、家庭と仕事のバランスがおかしくなってきたんです。仕事は全然嫌いじゃないんだけど、もうちょっと働き方を変えないとな、と。せっかくフランスにいるのにフランスのことを何も知らないのもありました。それで思いきって辞めたんですが、少し休んだら働きたくなって(笑)、やっぱり今までの経験を活かしたくてアトリエを開いたんです。


 小さくてもいいから自分のアトリエがほしいな。それと絵本のドキドキワクワクを感じられるようなことをやりたいです。子どもたちが学校帰りに寄って好きに絵本や本を読んだり、週末にアトリエに参加してもらえたり、小さい子はお母さんと来てもらったりとか。いろいろ夢が広がりますね。

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