NYで初めてのドラァグクイーンショーへ

熟練トークスキル
ノアゼットプレスが誇るグルメライター・マダム愛さんが、ニューヨークへ遊びにやってきた!愛さんと3時間話に花を咲かせたあと、「次はパリか東京か、ニューヨークで会いましょうね!それまで元気でね!」とハグ、なんなら涙を浮かべて解散をしたのでした。家について部屋着に着替えてソファに座って携帯を見たら愛さんから「30分後から始まるドラァグクイーンショー行きませんか」一緒に行くはずのお友達の具合が悪くなってしまったという。これはフッ軽の実力を試されている。行くか。 お店は30年の歴史を持つという老舗「LIPS」。お店の前で待っていたら、サービス係ドラァグクイーンさんに発見され「ベイビー中に入りなさいよ、好きなところに座って待ってていいわよベイビー」人生初のベイビー呼び、なんだかとっても嬉しい。気付かぬうちに私はベイビー回帰したかったのか。「トイレ借りていいですか」「当たり前よベイビー、2階上がって左よベイビー」計4ベイビーもらえた。もっと欲しい。 客層は普段着のおばちゃん7割、ギャル2割、1割男性。みんなアメリカの遠くからや、ヨーロッパから来ていた模様。早々に食事タイムが終わるとカゴを持ったクイーンさんたちが札束を配り出した。みんな手持ちのお札を1ドル札に両替している。昭和の温泉街サスペンスドラマで出てくる、ストリップショーのお姉さんのパンツに挟む熟練トークスキル▼やつか!初めて~!私も20ドル札を交換して凄い厚みの1ドル札束をゲットして、ショーがスタート。
ふたを開けてみると有名アーティストのモノマネ口パクショーであった。 次々とお客さんが1ドル札をひらひらさせて、口パクしながら踊りつつ回収するドラグァクイーンさん。口パクって、隣にいると口がパクパク音が鳴るのが聞こえることを知る。お金をこんなぞんざいに扱っていいのかと戸惑うアジア人の横で、持ちきれないお札はティッシュみたいに床に落っことされていた。 新世界にワクワクすっぞ!と隣を観たら愛さんが時差ボケで半目になっている。大丈夫、寝ても平気な内容です。時々トークコーナーが挟まれて、絡んでくるのではとヒヤヒヤしましたが、そこは英語が分からなそうな客をきちんと避けるプロ。一切寄ってこず。話の内容は半分も理解していないけど、おそらくほとんど下ネタと毒舌系で、その都度おばちゃんたちバカ受け。もしやこれはアメリカの綾小路きみまろか。
後半になるとお誕生日のお客さんをステージの椅子に座らせ、年齢を聞いて、下ネタで笑いをとって、高速で順番を回していく熟練のトークスキル。やはり綾小路きみまろである。私も「あなた、誕生日?それとも怪物を見に来ただけ?」「インスタフォローしてね」など、最低限の交流はした。終始アメリカ人のおばちゃんたちがドッカンドッカン笑っていたのは彼らの笑いのツボが水たまりくらいに浅いのか、実はクイーンたちがとんでもない面白いこと言っているのか?謎は深まるけど、前者に100ドルかけてもいい。 20ドル札から両替した1ドル札は大量に余ってしまって札だらけで帰宅。愛さん、楽しかったかな~??
1ドル札をひらひら…。

吉野亜衣子
ラジオ局を辞め、夫の留学についてパリへ。
帰国後、日仏文化交流のための NOISETTEを設立。2022年で設立10周年。
2024年春よりNY在住。
連載中のトモクンとポッドキャストやってます。
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- note『 毎日ニューヨークで困ってます! 』
- podcast『 CAFE NOISETTE 』


