アイデア枯渇気味のパリコレそれでも出て来る新しいクリエーション

すでに四半世紀以上パリコレを追い掛けていますが、そう簡単に感動しなくなってしまっているのですよ。昔のように、絶対に潜り込んででも見たいと思うショーは無くなってしまったし。ジョン・ガリアーノが活躍していた時代は、必死に追いかけようとしている自分がいましたが、それも20年以上前の話です。今のファッションは富裕層とセレブリティ向けのようになっていて、何のためのパリコレなのか良くわからなくなっています。人に夢を与えるメディアだったはずなのに、その存在意義が自分の中で揺らいでしまっているのです。
そんな中、2月末から行われた2025/2026秋冬コレクションでは、「凄い!」と思わせるショーがありました。それは、我らが日本のブランド、森永邦彦さんのアンリアレイジでした。僕は勝手に『モードの魔術師』と呼んでいて、ブラックライトを当てると反射するドレスや、前回の空気を送り込んで膨らむ空調服ドレスなど、奇想天外なものを披露してくれているのだけれど、今回は飛び抜けていました。直線的なプリントのドレスが、こんな風に突然光ったのでした。しかも、元ダフトパンクのトマ・バンガルテルの音楽に合わせ、ま
るで電光掲示板のようにモチーフが変化して二度ビックリ。
これはクリエイティブ集団「MPLUSPLUS」と共同で開発した、LED-LCDテクノロジーが埋め込まれた柔らかい糸と織物を使用しているそう。折りたたんだり、編んだり、縫ったり、ドレープしたり、あらゆる形に仕立てることが可能とのこと。もう凄過ぎます。
こんなとてつもないことをやってのけているのだから、もっと注目されて良いはずなのだけれど、パリのファッションは政治と密接に絡んでいたりするので、そう簡単には行かないようです。それにしても、海外のデザイナーに憧れてパリまでやって来たのに、結局は日本人のクリエーションに驚かされている現実を受け入れないといけない……。
トモクン
トモクンという名の45歳。在仏27年。ファッションジャーナリスト(業歴17年)は仮の姿で、本当はただの廃品回収業(業歴5年)。詳しくはブログ『友くんのパリ蚤の市散歩』にて。
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