五感で感じる津軽のスピリットフランス人津軽三味線奏者にインタビュー

【今月のお客様】
シルヴァン(澤田 春吟) さん
今回は、津軽三味線奏者として日仏で活躍するシ
ルヴァンさんこと澤田春吟(はるぎん)さんにイ
ンタビュー! サントリーホールや演歌歌手・細
川たかし氏との演奏経験のあるシルヴァンさんで
すが、レパートリーは広く、伝統曲から、クラシッ
ク、アニメ音楽、アルゼンチンタンゴまで多岐に
わたります。シルヴァンさんの津軽三味線への情
熱と、軌跡を伺いました。
ひとりだけだった外国人弟子入り
- 現在の活動について教えてください。
月に1 回ほどコンサートを行っています。病院で演奏したり、大学では日本の農村音楽や三味線を紹介することもあります。フランス人に三味線も教えていますよ。毎日4 時間ほど練習していて、私のそばにはいつも三味線がある。まるで私が三味線みたいね!日本には年に3 ~ 6 ヶ月ほど滞在して、パートナーであり、アコーディオン奏者の伊藤裕子さんや演歌歌手の細川たかしさんと演奏しています。細川たかしさんはお話するととっても愉快な方でしたよ。
- 津軽三味線を始めたきっかけは?
元々、私はプロとしてコンセルバトワールでクラシックギターを教えていたんです。30年前に伊藤裕子(前述)さんと来日したのも、タンゴカルテットでギターを演奏するためでした。ある時、裕子さんが勧めてくれた津軽三味線の高橋竹山*のCDを聴いて感動して、三味線を買ったんです。1年間独学で学んだんですが、とても難しくて。東京にいる先生(工藤昭仙氏)を紹介してもらって会いに行き、10年間習っていました。
- スペインのギターと津軽三味線には共通点があるんでしょうか?
津軽三味線と、スペインのフラメンコの音楽はとても近いものを感じますね。ギターの弾き方や、歌い方も似ている部分がありますし、聞いている人に強くエネルギーを与えるところも似ているなと感じています。
- 何年くらい津軽三味線を弾いていますか?
約25年です。師匠の細川孝義先生(旧名・澤田勝春)は、津軽三味線全日本金木大会のA級で優勝した奏者です。師匠は最初とっても優しくて、よくしてくださったんですが、名取をいただくために入門して正式に弟子になってから、すごく厳しくなりました。弟子は他にもいたけど、外国人は当時私だけ。師匠の言うことを必死で聞いて、師匠の演奏は録音して後で聞いて真似したり。日本語は難しいけれど、寿司や音楽の専門用語だけは理解できるんです(笑)。たまに外国人だからって私を敬遠する人もいたけど、私は全然気にしない。ほとんどの人は私にとても優しかったよ。今はアメリカ人やスペイン人も津軽三味線を学んでいます。
田植えから感じる日本文化の内側
- 観客の反応はどうですか?
日本では、外国人が伝統音楽を演奏することに対してとても温かく捉えてもらえます。フランスでは、津軽三味線のエネルギーを好む人もいれば、音が強すぎると感じる人もいるかな。裕子さんと「梅干し」というデュオを組んでいますが、日仏両方で親しんでもらっています。この名前は、梅干しが「クセがあるけど、おいしい」というところからきています。梅干しに限らず、私は納豆・塩辛・馬刺し・焼酎も大好きだしね(笑)。Umeboshiという音の響きはフランス人にはとてもsweetに感じられるということもあるね。このデュオではフランスの歌を和風に編曲したり、アニメ音楽やアルゼンチンタンゴを演奏することもあります。最近CDもリリースしました。
- 津軽三味線の魅力と難しさはどこにあるんでしょうか?
溢れるほどのポジティブなエネルギーが魅力です。難しさは、津軽の深い精神を理解すること。津軽三味線は地域の農村生活に根ざしているので、私はそのスピリットやエネルギーをより深く感じたい。それにはやっぱり日本でたくさんのことを感じないといけないんだ。
- 具体的にはどんな努力でしょうか?
映画を観たり、音楽を聴いたりすることかな。田植えもやらせてもらったり、五感すべてを使って、日本文化の内側を理解したいと思ったんです。私はフランス国内もたくさん旅しましたが、元々のルーツはカリブ海のフランス領グアドループなので、その文化も私の中には入っています。
- 今後の目標は?
もっと日本語を流暢に話せるようになって、日本に長く滞在したいですね。 私にとっては日本が故郷みたいに感じるから。日本語は難しいし、特に漢字は「パズル」のようで、語彙も基礎から覚えないといけないけれど、日々少しずつできるようになるのはとても面白いです。漢字は想像力への美しい扉でもあります。
**高橋竹山 津軽三味線の祖と言われる巨匠。1910生、
1998年没。


