日 常 に 降 り 注 ぐ 光 、 フェルメール 17世紀デルフトからの贈り物

今月のアート

『レースを編む女』

ヨハネス・フェルメール

ルーヴル美術館

オランダのデルフトという町で生まれ、生涯をこの町で過ごしたフェルメール。彼にとって、1km四方ほどの小さな町は、世界そのものだったのかもしれません。父から宿屋と画商の仕事を受け継いだとされ、その傍らで静かに絵を描き続けました。
 窓から差し込む柔らかな光。手紙を読む女性、牛乳を注ぐ女性、楽器を奏でる人々。フェルメールが描いたのは、歴史上の英雄ではなく、ありふれた日常の一瞬です。
 光は誰にも平等に降りそそぎ、何気ない暮らしもまた、かけがえのないものとして画面の中に描かれています。17世紀のオランダは、交易による繁栄を背景に、市民が絵画の新たな担い手となり、宗教画や王侯貴族の肖像だけでなく室内風景や風俗画、静物画も盛んになりました。フェルメールも、その時代に生きた画家の一人です。
 以前、谷川俊太郎さんがフェルメールについて、「自分の外に見えるものに興味を持ち、それを真実と捉えようとした。ただただその存在を表現した」と語っていたのが印象に残っています。そして、「とにかく、とても美しいんですよ」と。
 しかしフェルメールの死後、その名は長く忘れられました。19世紀半ばのフランスで、クールベやミレーらが、名もなき人々の暮らしや目の前の現実を描き、新たな絵画の潮流を生み出しました。そうした時代のなかで、写実主義を支持していた美術批評家テオフィル・トレ=ビュルガーは、17世紀オランダ絵画に新たな価値を見いだし、フェルメールにも再び光を当てたのです。
 現在、フェルメールの現存作品はわずか35点前後。そのうち《天文学者》《レースを編む女》の2点はルーヴル美術館にあります。そして今《真珠の耳飾りの少女》と《ディアナとニンフたち》が大阪へ。マウリッツハイス美術館の改修休館に伴う、極めて貴重な来日です。17世紀、デルフトの小さな部屋に差し込んだ光を、いま日本で見つめてはいかがでしょうか。室内風景や風俗画、静物画も盛んになりました。フェルメールも、その時代に生きた画家の一人です。
 以前、谷川俊太郎さんがフェルメールについて、「自分の外に見えるものに興味を持ち、それを真実と捉えようとした。ただただその存在を表現した」と語っていたのが印象に残っています。そして、「とにかく、とても美しいんですよ」と。
 しかしフェルメールの死後、その名は長く忘れられました。19世紀半ばのフランスで、クールベやミレーらが、名もなき人々の暮らしや目の前の現実を描き、新たな絵画の潮流を生み出しました。そうした時代のなかで、写実主義を支持していた美術批評家テオフィル・トレ=ビュルガーは、17世紀オランダ絵画に新たな価値を見いだし、フェルメールにも再び光を当てたのです。
 現在、フェルメールの現存作品はわずか35点前後。そのうち《天文学者》《レースを編む女》の2点はルーヴル美術館にあります。そして今、《真珠の耳飾りの少女》と《ディアナとニンフたち》が大阪へ。マウリッツハイス美術館の改修休館に伴う、極めて貴重な来日です。17世紀、デルフトの小さな部屋に差し込んだ光を、いま日本で見つめてはいかがでしょうか。


 
*大阪中之島美術館/フェルメール 真珠の耳飾りの少女展

会期:2026年8月21日~ 2026年9月27日
https://nakka-art.jp/exhibition-post/vermeer2026/

妹尾優子


仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。