ニューヨーク、生のツリーを地下鉄で運ぶの巻
天井につかえている。
12月に入ると街で生のツリーが売られるようになりました。そうか、この街もパリと一緒で人工ツリーではなく、生の木を飾るのか。我が家の前のツリー売りに値段を聞いたら、「200ドルからは絶対に下げない」と強気。お店の人に「他のところはもっと安いと聞いた」と言うと「ウチの木は、先週切ったばっかり。安い木は10月に切っているから活きが悪いの」確かめる術がない―――。高すぎてここは断念して取材を重ね、少し遠めのスーパー、ホールフーズでなんと69ドルで売られていることが発覚。地下鉄で行けば15分弱。持ち帰られるのか。とりあえず行ってお店の人に相談しよう!
家族を引き連れスーパーに向かう道すがら、二人でツリーを運ぶ夫婦の姿が。白雪姫の小人みたいにエッサエッサと楽しそう。あれをやるのね~。お店に到着するとパンスト相撲みたいに網でギュウっとなった大量のツリーと、物色する多数の客。あるファミリーはキャンプ用具を運ぶカートを持ってきています。普通は歩いて来れる人が買いに来るんだよねと不安が募ります。「小さいのを買って持って帰りたい」とお店の人に伝えると「背の高さは全部一律。6~7フィート。」へえ……って182センチから213センチ! 部屋の天井までの高さそんなにあった?? 最悪家で伐採である。しかし、69ドルは魅力的。ここで決める!
肝心のツリー選びですが、初心者は何が良くて何が悪いのかさっぱりわからん。お店のお兄さんがおススメを二種類出してくれたけど違いがわからん。伐採時期も確認しなければ。「この木、いつ切られたの?」「知らない。俺、売ってるだけだし」この人のお勧めで買っていいのか。一向に期待する答えを得られないまま暗くなってきたので、勧められた形が三角っぽいツリーをゲットしました。
ビニールで根元を軽く包んだ状態でぱっと渡してきて受け取ったら、無茶苦茶に重い。金太郎ってスゴイ! 縦持ちは無理なので大人2人が前後に別れて運ぶことに。重すぎて、駅までの10分が永遠のように。安室ちゃん、永遠って言う言葉、そろそろ覚えた? 重すぎて、木を抱えて地下鉄乗ったらマズいかな、など考える余裕もナシ。早く家に着きたい一心で、地下鉄の入り口へ向かったものの、回転バー式の改札が抜けられそうにない。子どもたちがオロオロしているのを見た、駅のお兄さんが、「早くこっちのドアに来い!」と手を伸ばして非常ドアをオープン。リポビタンDのCMみたいな緊張感です。白雪姫の小人さんたちが軽々木を運んでいたような気がしたのだけど、よく考えたらあの人たちが運んでいるのは木じゃなくて、ピッケルだった―――。なんとか地下鉄に乗せるも、背が高すぎて斜めにしないと乗せられないので、傾けて支える姿勢。金八先生、私今ニューヨークで漢字の「人」をやっています。支える相手、木だけど。明るい車内で気づいたのは、若旦那の頭に葉っぱがたくさんついていることと、今日初めて着た新しいコートがとんでもなく汚れていること。木は思っていたより重くて汚い。自分の無知にガッカリです。家に着いたらあらかじめ買っておいた水を入れられるツリースタンドに木を立て、ねじで止め、網を取ったらバサバサ~ ! 床一面葉っぱ。もう枯れはじめ……? 案の定背が高すぎて、てっぺんが天井に刺さってグニャっとなって星もグニャって頭を垂れています。切る元気なし。来年は近所の200ドルを買ってしまうかもしれない。
地下鉄ツリーはさほど珍しくないのか、ニューヨーカーチラ見のみ。
吉野亜衣子
ラジオ局を辞め、夫の留学についてパリへ。
帰国後、日仏文化交流のための NOISETTEを設立。2022年で設立10周年。
2024年春よりNY在住。
連載中のトモクンとポッドキャストやってます。
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