ヒロコとガイック二人の出会いと歴史を語る

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ヒロコさん

SNSで大人気の日仏カップル漫画の作者であるヒロコさんが、6月に新著『フランス人は靴下に穴が空いていても優雅に生きる』(KADOKAWA)を出版しました。今回はヒロコさんにフランス人の夫ガイックさんとの出会いからフランスでの育児事情までお聞きしました。

デート3回、のち告白は日本の文化!?

空いています。向こうは土足で過ごすので誰も見ないから問題ないみたい。穴が空いていることは美しくはないけど、そこが彼の美しさの範囲には入らないのかもしれません。

 ガイックが独特な日本語、フランスの大学で勉強した日本語を喋るんです。例えばワンピースを着ていた時に、「すごく綺麗だね、その衣」って言ったんですよ(笑)。普通は衣って言わないよって言ったら、ガイックと勉強した仲間は全員、衣って言ってたって。シェアしたい!この面白さ! って思いました。1人で面白がるんじゃなくて、みんなに面白がってほしいから漫画にしたんです。

 当時、私はオーストラリアでのワーキングホリデー(以下、ワーホリ)から日本に帰国したばかりでした。英語を話したい目的で、マッチングアプリで相手を探していたところ、ワーホリで来日していたガイックと出会ったんです。初めて会ったのは中野駅前の焼き鳥屋さん。その後カラオケにいきました。私は楽しく酔っ払って、マキシマムザホルモンを歌ったんですが、彼は自分の好きなラルクアンシエルを歌っていたのを覚えています。

ガイックからです。日本の文化で、最初に3回ぐらいデートをして、告白してオッケーをもらえたら、手を繋いだりできるというようなことを勉強していたようです。フランスは告白なんて高校生ぐらいがするもので、大人はそういうのはないらしいですが。

ガイックのワーホリが終わってフランスに戻らないといけなかったので、今度は私がワーキングホリデーでフランスに行こうと。フランスにはPACS*という制度があって、それを使いました。コロナ禍も経て子どもを産んでから、もっと契約上の結びつきを強くしたほうがいいねと話して結婚に切り替えたんです。

帰国して気づいた
フランスの良さ

初めてのヨーロッパだったので、最初は洋風な街並みとか綺麗だなと思っていたんですが、そこまで持ち上げられるようなものでもないかなと(笑)。日本で見るフランスのイメージと現実はかけ離れているなと思いました。
 例えば渡仏してすぐの頃、郵便局での手続きの対応がとても悪くて、日本だったらすぐ終わるようなことを何分も待たなきゃいけなかったり。ガイックは「これがフランスだ」みたいな感じでしたけどね(笑)。

フランス語学校に行きながら、ラーメン屋さんとお寿司屋さんで働いていました。フランス語で数すら数えられない状態でホールに出されたので、すごく困ったんですけど、お客さんが察して分かりやすく話してくれて優しかった。でもシェフはほとんどがネパール人でまかないは毎回ネパールカレー(笑)。ちゃんとフランス語が話せるようになったのは1年以上経ってからでした。

子連れでのお出かけは、日本に比べるとなかなか難しいと思いました。ご飯を食べられる場所やトイレを確認してから出かけないといけないので。行く場所も限られていて、近くの公園で遊んで帰るとか、隣の義実家に行ってご飯を食べて帰るぐらい。電車に乗って遊びに行くことはほとんどなかったですね。

 ワインとチーズとパンがすごく美味しかったことです。他はあんまり…でも帰ってきてからフランスの良さに気づいたんです。日本はサービスや食べ物もよくて大好きですが、ちょっとだけ窮屈さを感じるのは、サインやアナウンスが多すぎること。フランスは日本に比べると注意書きが多くないし、別に電車の中で電話しても誰も何も思わない。今回出版した本でもフランスで驚いたことや、感じた文化の違いなどを紹介しているので、皆さんに読んでもらえたら嬉しいです。

*PACS: Pacte Civil de Solidarité(連帯市民協約)。性別に関係なく成年に達した二人に対して安定した持続的協同生活を営むために交わされる契約のこと。フランスでは結婚と同様の権利と義務が与えられることから、この制度が一般に普及している。