ロシアから来ても、フランス語だらけのバレエ

今月の本

『華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界――ロシア・バレエとモダン・アート』

海野弘 

解説・監修
PIE International

バレエとフランスは古くからの絆があるが、バレエ用語がフランス語だらけになったのは、フランスで活躍した数え切れないほどのダンサーたちが、現在のバレエの形への発展に貢献してきたからかもしれない。
 バレエ・リュス(Ballets Russes:ロシア・バレエ団)はパリを拠点に、20世紀前半のバレエへ革新的な風を吹き込んだ存在だ。本書は、副題にあるように、長い年月で培われてきたバレエが、「モダン・アート」と結びつき、バレエ・リュスのアーティストたちによってどれほど更新されてきたのかが分かる内容となっている。
 芸術家たちは時代ごとにフランスへひき寄せられてきた。すでに太陽王ルイ14世のヴェルサイユ時代には、王の娯楽を彩るためにイタリアからオペラ作曲家ルリーが関わり、バレエの原点につながる作品が生み出される。イタリア、フランスの次にやがてバレエはロシアへと伝わり、各国の影響を受けながら進化していった。そして1909年
に芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフよって創設した「バレエ・リュス」がパリを魅了し、新しいバレエの力が街に流れ込んでいく。バレエ・リュスで活躍した有名なアーティストの中で、音楽のエリック・サティ、背景美術のパブロ・ピカソ、脚本のジャン・コクトーなど多くの才能が結びつき、理想的な総合芸術としてのバレエが形になっていった。なかでもニジンスキーのような天才的なダンサーが存在感を示し、バレエは優雅さだけでなく、時代の感覚を身体で表す表現として強く印象づけられる。当時の文化や社会の空気に寄り添いながらも、それを揺さぶるような作品だったからこそ、バレエ・リュスは観客の記憶に残り、後の芸術にも影響を与えたのだろう。

ジャンマリー・プルドン


福岡在住のフランス人。福岡で仏語教室やフランスに関わるイベント企画を通してフランス文化普及に貢献する。Nautilus主宰。