これぞ狩猟民族! 圧巻の剥製!

今月のアート
マレのアルシーヴ通りにひっそりとある狩猟自然博物館。最寄駅はメトロ11号線ランビュトー駅。閑静な邸宅にこれほどの剥製があるとは。日本で言うなら国立科学博物館級の所蔵品が、ところ狭しと陳列されています。
パリ留学中、課外授業で行かない限り自ら行くことはなかったであろう、この博物館。外観と展示内容のギャップに驚き、今では好きな博物館の一つになりました。一度足を踏み入れると、フランス人が狩猟民族であったということがまざまざと伝わります。狩猟と聞くと一瞬身構えてしまいますが、そこはフランス、狩猟用の武器や道具、動物をモチーフにした美術品や工芸品、動物の剥製などを芸術性豊かに展示し、自然と人間の関わりがよくわかる興味深い内容になっています。 この博物館もオテルパティキュリエ(HotelPateculier)。17世紀のゲネゴー館と18世紀のモンジュラス館という二つの建物からなり、ゲネゴー館は17世紀の建築家マンサールの手によるもの。
博物館の創立者は、実業家のフランソワ・ソメール夫妻。もともと自然や狩猟へ強い関心を持っていた夫妻は1964年に「狩猟自然財団」を設立。時を同じくして、フランスでは当時の文化大臣アンドレ・マルローを中心に、文化遺産の保護に力を入れる動きがありました。荒れて、取り壊しの危機にあったゲネゴー館をどうしたものかと悩んでいたマルローは、ソメール夫妻に、その歴史的建物の救済を依頼。夫妻はそれを修復し、ゲネゴー館を拠点に狩猟自然博物館を開館するに至りました。近年ではコレクションも増え、隣接するモンジュラス館も購入し、博物館は拡張されました。
そしてこの3月、同館は長らく個人コレクションにあった、写実主義の画家ギュスターヴ・クールベの未公開作品「雪の中の狩猟風景」を入手。クールベの写実主義の中心にある雪景色と緊迫した狩猟の風景の描かれたこの作品は博物館の狩猟絵画コレクションにおいて重要な位置を占めます。12月31日までCabinet du Loupで展示予定とのこと。
妹尾優子
仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
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