狩猟という名の社交のひととき ――18世紀、貴族の愉しみ

今月のアート
『狩りの昼食』
ジャン=フランソワ・ド・
トロワ
ルーヴル美術館蔵
写真:Sammyday /
Wikimedia Commons
(Public Domain)
狩りという言葉を題名に掲げながら、描かれているのは獲物を追う場面ではなく、人々が食事や会話を楽しむ光景が印象的なこの作品。1737年、フォンテーヌブロー宮殿にあるルイ15世の私的な居室の大食堂を飾るために制作されました。
作者は、ジャン=フランソワ・ド・トロワ。18世紀前半のフランスで活躍し、歴史画や宗教画、神話画を手がけたほか、「タブロー・ド・モード」と呼ばれる絵画の先駆者でもありました。タブロー・ド・モードとは、当時流行していた衣装や室内装飾、上流階級の余暇や男女の恋愛模様などを題材とする絵画のこと。
作品に目を戻すと、木々に囲まれた野外の食卓では、狩りの合間に男女が昼食を楽しんでいます。華やかな衣装に身を包んで身を寄せ合い、会話を交わす姿から、親密で優雅な社交のひとときが伝わってきます。
当時、狩猟は王侯貴族にとって重要な娯楽で、人々が交流する機会でもありました。ルイ15世も狩猟を愛し、厳格な宮廷儀礼から一時的に離れ、親しい人々と過ごすひとときを楽しんでいました。18世紀のフランスでは、王室の居室装飾において、それまでの神話を題材とした作品に加え、田園生活や狩猟など、より親しみやすい主題も好まれるようになりました。こうした美的趣味の変化は、摂政時代に始まったものです。
摂政時代とは、ルイ14世の死後、幼いルイ15世に代わって、オルレアン公フィリップが摂政として政治を行った1715年から1723年までの時代です。その頃、政治や文化の中心は、ヴェルサイユからパリへ移り、自由な気風のもと、新しい芸術や文化が花開いた、華やかで活気に満ちた時代でした。
実は、この作品と対になる、鹿狩りの場面を描いた《Le Cerf auxabois》(追い詰められた鹿)という絵画も注文されていましたが、現在、所在はわかっていません。見てみたいですね。
妹尾優子
仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
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