王の宮殿から人々の美術館へ ユベール・ロベールが描いたルーヴルの未来

今月のアート
『ルーヴルのグランド・ギャルリー改造計画』
ユベール・ロベール
ルーヴル美術館写真:Wikimedia Commons(Public Domain)
画面の奥へと長く続く壮麗な回廊。高い天井から自然光が降り注ぎ、壁面には数多くの絵画が並んでいます。作品を鑑賞する人々や、制作に励む画家たちの姿も見えます。1796年、ユベール・ロベールが描いた《ルーヴルのグランド・ギャルリー改造計画》。古代遺跡や想像上の廃墟を描くことを得意としたロベールは、実際の建築や庭園の整備にも関わりました。1784年には王室絵画の管理職に任命され、王政時代からグランド・ギャルリーの整備計画に携わり、革命後も美術館の運営や展示空間の整備に関わります。
ルーヴル宮を美術館として整える構想は、革命によって突然生まれたものではなく、王政下の計画が、革命を経て公共の美術館事業へと引き継がれたのです。1793年開館後も展示空間の整備は続き、この絵は、すでに開館していた美術館をより良くするための提案として描かれました。
注目は、天井から取り入れられた自然光です。当時のグランド・ギャルリーは、主に側面の窓から光を取り入れる構造でしたが、ロベールは天井に採光用の窓を設け、絵画をより見やすくする空間を提案しました。この構想は、19世紀のナポレオン3世時代に実現します。現在のグランド・ギャルリーは構想そのままではありませんが、ロベールの理想の一部が、長い年月を経て形になったものです。
画面右側には、絵筆を手にするロベール自身の姿も。美術館は鑑賞だけでなく、画家が名画を模写し、技術を学ぶ場所でもありました。美術館を人々に開くとは、単に扉を開くことではありません。作品を守りながら、鑑賞や学びのための環境を整えることも大切です。230年前に描かれたロベールの構想は、芸術を未来へ伝え、社会と結びつける美術館の役割を、今も私たちに問いかけているようです。
妹尾優子
仏語教師の傍、仏文学朗読ラジオ「Lecture de l’aprèsmidi」の構成とナレーションを担当。美術史&日本史ラブ。日仏の文学からアートまで深堀りする日々。
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