お客さんにとっての「我が家」を目指して―日仏夫婦ラーメン店オーナーに聞く

【今月のお客様】

三上 翼 さん リズ さん

パリ11区で2025年にオープンした「RAMEN WAGAYA」。オーナーは元々料理人としてパリのラーメン屋で出会った三上翼さん・リズさんご夫妻。二人だけでの仕込み、ぶれない味が小さな「WAGAYA」の強みです。
自分たちのお店を出すまでのいきさつや、フランスならではのラーメンの味わいかたについてお話を伺いました。

ちょっと日本、
ちょっとフランスの味を目指す

 パリにラーメン屋さんはたくさんあるけど、本当においしいところは限られてるなと思っていて、じゃあ自分たちで作ったほうがいいじゃん!と。二人でお店をやろうという話は昔からしていましたが、コロナ禍のタイミングで家でラーメンを作り始めたんです。最初は友達に食べてもらうところからスタートして、インスタを発信して、場所を借りてポップアップを始めたんです。そこの評価を見て、実店舗を出してもいけるかな!と。

リズ 日本人のソウルフードにラーメンも絶対あるでしょ。フランス人もラーメン好きだけど、もっ
と日本の味や雰囲気に近いお店をパリで作れたらいいなと思って、「WAGAYA」ができました。

 名前を考えたのはリズですね。接客も含めて、お客さんが自分の家に帰ってきたみたいな店づくりをしたいなと。僕たちの我が家だと思うし、お客さんにとっての我が家になってほしいです

リズ 「いらっしゃいませ」とか、常連さんには「いつもありがとうございます!」とか日本の接客をしています。でも麺には日仏の小麦粉をブレンドしたり、フランスの塩やローズマリーも入れてフランス風の味もある。ちょっと日本、ちょっと
フランス、そこを喜んでもらえる。「ごちそうさまでした」ってフランス人が言ってくれたりして、面白い。

 ラーメン屋は煙突がある物件を探さなきゃいけないし、投資者なしでパリで店を開くのは、予算的にも大変でした。今の物件は元は伝説のクレープ屋さんでした。オープン当初は、キッチンだけ最低限の工事をして、内装や看板もそのままだったので、クレープ屋のつもりで入ってくるお客さんもいました。隠れ家ラーメン屋として、SNSで広まりました。デートで使う人もいますよ。

スープは
飲み干すのがフランス流!?


 トマトときゅうり、味玉やチャーシューが具材ですが、イメージとしては、日本の冷やし中華の味付けですね。酸っぱさは少し抑えています。リズ マヨネーズを加えてちょっと洋風にしてます。「冷やし中華はサラダ感がありますよ」とか説明すると、女性は酸っぱいのが好きだから頼むけど、男性はしょっぱいラーメンが多いかな。

 基本的には日本で食べるラーメンと一緒だと思ってます。違うとしたら、日本人はスープを飲み干さないけど、フランス人は逆です。うちのスープの味自体は日本の味だけど、日本のラーメンに比べて塩味を抑えて、飲み干せるようにしています。パンチはあるけど、しょっぱくないスープにして、フランス人の舌に合わせてます。
リズ だから私の舌は、味見に結構使われてるんですよ(笑)。フランスではスープは体にいいものと思われています。パンにソースをつけるかんじで、スープは飲む。おいしかったら残しちゃだめという文化もありますよ。

リズ 子どもの頃から大好きなので、料理だけは苦にならない。お客さんにおいしいと言われると嬉しい。初めて出す冷やし中華やサイドメニューのシューマイはおいしいと思ってくれるかなとワクワクするし、楽しい。やってよかったなって思います。
翼 キッチンがすごく狭いので、二人で仕込みをしてると戦争になりますけどね。

翼 リズは日本人ぽいなと思うけど、日本人女性に比べたら強いかな。
リズ フランスでもキュイジーヌには10%しか女性はいないから、強くないと舐められるんです。主人はどれだけ疲れても、仕事にまじめなところは日本人だなと思います。プラン通りだし、まるで新幹線みたいに遅刻しない(笑)。プライベートでも時間に厳しいなと思う。フランス人はもっと柔らかい。休みに友達と会うときはみんな遅れる。なんでこないの?とかは言わない。そんなに時間は守らないよね。
翼 それは俺も感じるなあ。

翼 2年目からは、内装とか少しずつ自分たちのやりたい店づくりをしたいですね。
リズ ストレスもあるから、2年目ではリフレッシュをできるようにしたいなと。もう少し余裕を持ちたい。もっと器が大きな人になれたらいいな。