日越仏、3か国に思いを馳せるアジア在住30年の元フランス外交官

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クサヴィエ・ヴィエルメ さん
アジアに30年以上在住してきたクサヴィエ・ヴィエルメさんは、仏サン・マロ出身、29歳で国際協力の仕事を目指して仏語教師から転身、仏外務省の外交官として東京で4年過ごし、その後ベトナムで長く過ごされています。大学や研究所での仏語教育と文化交流活動の傍ら、大好きな俳句作りを続けているクサヴィエさんに、今回は日本・ベトナム・フランスの3か国へのそれぞれの思いを伺いました。
仏医学の影響が色濃いホーチミン
- 現在のホーチミンには、フランスが統治していた影響はまだ残っていますか?
現代とフランス統治時代を比較するのは難しいでしょう!フランス領時代、フランス語はベトナム人に「押し付けられた」ものでしたが、戦後1980年代にはベトナムの中学校でフランス語が外国語として学ばれ始め、90年代にはベトナムでの仏語教師育成に、フランスが多くの投資をしました。でも今のベトナムの若者は韓国や米文化に惹かれていますね。私の学校の生徒でさえ高校の廊下では英語を話しますし、ホーチミンはフランス語をあまり耳にしない国際都市になっています。
- 故郷サン・マロとホーチミン、どちらが住みやすいでしょうか?
これも難しい質問ですねえ!サン・マロは海辺の歴史ある街で観光客もたくさん来ますが、ここでの暮らしは素晴らしいです。若い頃は海でセーリングをしたり、自転車で学校に通って、市場で新鮮な魚を買うのが楽しみでした。自然が美しく、サン・マロの人たちは潮の満ち引きや季節のリズムに合わせて生きている気がします。ただ高齢者が多く、街は少し活気に欠けているので、東京やホーチミンの元気な生活に戻ると若返った気がしますよ!
- ホーチミンでの暮らしはどうですか?
自然が少ないと感じることもありますが、この大都市の魅力のひとつはカフェ文化です。数の多さだけでなく、それぞれのカフェがとても美しく、工夫されています。異国風の装飾や、鯉が泳ぐ池、花に囲まれた石庭、竹の間のハンモックなど、洗練されたスタイルが楽しめます。日曜の午前中には家族連れがベトナムコーヒー(エッグコーヒー、キャラメルコーヒー、カフェ・スアダーなど)と、ボリュームたっぷりのブランチや、マンゴーやアボカドなど南国の果物を使ったスムージーを楽しみます。何よりも、ここでは時間をゆったり過ごせるのが魅力です。
- ホーチミンでフランスを感じられる場所はありますか?
フランスの存在感は、郵便局、大聖堂やフランス総領事館など部分的に保存された植民地建築に今も残っています。また、ベトナムには昔からずっと仏医学の強い影響がありました。実際、市内の3つの通りには有名なフランスの医師や研究者*の名前が付いていますし、仏人医師らが発起人となった仏越病院(FV)も評判が良く、健在です。さらに、フランスの評判が名高いのはガストロノミーの分野でしょうね。ベトナムの中産階級は毎月新しい「星付き」フランス料理店に出かけ、若者はフランス料理やホテル学に惹かれています。他にもフランスは多くの分野でベトナムとの友好関係を強化してきました。
フランスの詩人は「おしゃべり」過ぎる?!
- 日本についてはどう思っていますか?
10代の頃から「恋」していた日本に赴任できたのはラッキーでした。私の日本への愛は、日本文学、特に松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の俳句に魅了されたところから始まったんです。わずか3行で儚い「瞬間」を表現し、一瞬の感情が感覚によって引き起こされること。そして鳥の鳴き声、布の色、海の音などの光景が句のなかにギュっと詰まっている。「侘び寂び」の感情を数分で捉えるなんて!フランスの詩人たちはとても「おしゃべり」で、気持ちを表現しすぎます。
- ご自身で俳句を作られると聞きました
ええ。私は2年に一度伊豆半島を訪れるのですが、美しい風景の前で立ち止まり、インスピレーションを受けると、言葉が自然に浮かんでくるんです。そして民宿の中で何時間も言葉を練り直すんです。過去10年間で約50本の俳句を書きましたが、自信が持てず、出版する勇気がありませんでした!私の俳句をひとつ紹介しますね。
Premier matin de printemps
Même mon ombre
Est en excellente santé
春の朝 我が影さえも すこやかに
- 今後、やってみたいことを教えてください。
来年にはリタイアするので、フランス、ベトナム、日本の間で人生を整理するつもりです!大学での文学の講義や、観光地から離れた場所で長期間ハイキングにも行きたいですね。日本語がちゃんと話せることで、いつもいろんな人と出会いがあるんですよ!ほら、私は幸せな男です!
*アレクサンドル・イェルサン(ベトナムに帰化した細菌学者、ペスト菌の発見者として有名)、マリー・キュリー(放射線治療のベトナム導入の基礎を築いた科学者)、アルベール・カルメット(サイゴン・パスツール研究所の初代所長


